無限の可能性を持つ、ミュージック・コンピューター「Critter & Guitari Organelle M」のレビュー。
経緯
基本的には、以下の理由で。
- 前のバージョン、Organelleを検討していた
- Organelle Mのリリース情報をキャッチしていた
- Pure Dataで組んだパッチが、利用できる
- ライブの際に、PCをなるべく使いたく無い
Organelleからのアップデート
- 処理速度・スペックの向上
- TRS MIDI IN & OUT
- スピーカー内蔵
- マイク内蔵
- 電池駆動対応
旧Organelleを買う利点が見つからない程、良い方向にアップデート。
なので、リリースを待っていました。
が、今現在、本国でもバックオーダー待ちとの事なので、欲しい方は、予約して購入するのが良いかと思う。
Organelleの意味
ラテン語のオルガネラ。
細胞小器官との事で、細胞の内部で特に分化した形態や機能を持つ構造の総称らしい。
おそらく、内部で使用されている言語の「Pure Data」から連想された言葉だと思われる。
確かに、それっぽいと言えば、それっぽいかな。
どんなデバイスで、何ができる?
ミュージック・コンピューターという言葉の通り、音楽用のコンピューター装置。
Pure Dataで出来る事なら、なんでもできるって感じ。
マニュアルからの抜粋だが、楽器であり、エフェクトプロセッサーであり、ジェネレーターであり、あなたが望むように変化する楽器。
まさに、これ。
仕組みは、
「Raspberry Pi」というコンピューター上で、「Pure Data」というマルチメディア表現に特化したソフトウェアが動作している。
そこに、パッチと呼ばれる、それぞれ任意の機能を持ったプログラムを読み込んで、エフェクターやシンセサイザーなど独自の楽器として動作させている。
ツマミ、ボタン、などで、内部プログラムのパラメーターをコントロールし、音やデータを出力。
オーディオや、MIDIデータなどを入力する事もでき、それに処理を加えて、出力する事もできる。
あとは、アイデア次第な楽器。
Raspberry Piを使用し、Pure Dataで音を出した事がある方は想像がつくかも知れないが、コンパクトにまとまっていて、プラットホームとして大変優れている事に気づく。
自分も、同じような事を考えて、アプローチしていたが、ここまでコンパクトには纏められないし、難しい部分を隠すデザインは流石。
プログラムができなくても
Organelleの内部処理には、ビジュアルプログラミング言語の「Pure Data」が使用されている。
プログラムが理解出来ないとダメかと言われると、別にそんな事は無い。
既に大量のシンセやエフェクターが内蔵、公開されているので、それを選択して使うだけでも、通常の楽器の何個分にも相当するので、楽しい。
プリセットを変更していくだけで、色々と機能や使い方が変わって行くので驚くだろう。
起動時のパッチのカテゴリーを抜き出してみたが、こちらをみれば、どんな事ができるか想像できるだろう。
このカテゴリー以下には、それぞれ更に、色々なパッチが用意されているので、なんでも出来る感が伝わるかと思う。
- Effects
- Hybrids
- Sampler
- Synthesizer
- Utilities
使えばわかるが、「この機能を拡張したい。」「この部分をコントロールできれば」という欲が出てくるので、知れば知る程、「Pure Data」に興味が出てくるはずだ。
「Pure Data」をやってみたいけど、イマイチ踏ん切りがつかないって方、久々にやってみるかって方には、背中を押してくれる、良いプロダクトだと思う。
ビジュアルプログラミング言語
Pure Dataや、Max/MSPなどもそうだけど、パッチ型のビジュアルプログラミング言語は、プログラムの取っ掛かりには、結構良いと思う。
メディアアートなどでも使われているが、やりたい事、表現したい事が先にあって、プログラミングという手法を取らざるおえない場合は、こういった言語が、てっとり早く、目的地に連れていってくれる。
一度、簡単でも良いので、概要でも掴んでおけば、こういった表現をする場合には、こういったアプローチを取るのが良いなというのが、理解できるので、こういった楽器から、片足を突っ込んでみるのも良いだろう。
サイトからパッチがダウンロードできるので、開いて見てみれば、内部パッチの理解も深まると思うのでオススメだ。
入出力ポート
このデバイスを理解するには、入出力ポートを知れば、わかりやすいと思う。
なので、1つ1つ見ていく。
ヘッドフォン入力
1/8 TRS(ステレオ)ジャック。
ヘッドフォンを接続するのに使用。
L+R Out
1/4 TRSステレオラインアウトジャック。
以下のようなYケーブルを使用するので、無い場合は用意
スピーカースイッチ
内臓スピーカーからの出力を許可するか、許可しないかのスイッチ
L+R IN
1/4 TRS ステレオラインインジャック。
上記を参考の上。
あとはギターなどのモノラルケーブルも可
インプットセレクトスイッチ
スイッチが左だと1/4 TRS インプットのみ、スイッチが右だと内臓マイクからのみ信号を入力。
フットペダルポート
1/4 ジャック対応。
キーボードのサスティン/ダンパーペダルを接続。
ノーマリークローズ、マイナス極性のペダル、エクスプレッションペダルも対応。
同タイプや、自作のペダルも仕様に沿っていれば使えるだろう。
MIDI Out
MDI-TRSケーブルを選択する。
購入するとそこそこな値段するので、自作するのもおすすめ。
MIDI In
上記を参照の上
microSD カードスロット
OSとパッチが保存されている。
なので、あまり触る事はない。
HDMIポート
ビデオ出力される。
マウスとキーボードを接続して、OSを触ってみるのも、良い理解に繋がると思う。
一度繋いでみる事をお勧めする。
9VDC パワーポート
9VDC, 1000mA以上, 2.1mm センターマイナスのパワーサプライに対応。
付属の物が壊れた際は、この仕様で探せば良いが、音楽好きなら意外と自宅にある。
パワースイッチ
Organelleの起動とシャットダウンに使われる。
OS起動と、シャットダウンに数秒かかります。
USB ポート
2.0 Type A USBポート。
USB-MIDIケーブル, WIFI アダプタ, Serial over USB, USBハブ, USBドライブなどが接続可能。
MIDI over USB に対応したクラス準拠のデバイスなら、接続可能なので、自宅にあるMIDIデバイスを接続してみよう。
※USB A to Aケーブルは使用しない事。
PC&コントローラー VS Organelle M
実際、Organelle Mと同じような事をする為には、以下があれば実現できる。
・ノートPC
・Pure Data
・MIDIコントローラー
・オーディオインターフェース
PCベースの方が、多様性や拡張性は高い。
しかし、Organelle Mの、コンパクト感、起動スピードを体感すると、音を奏でる楽器としてのアドバンテージは、Organelle側かと思う。
実際、ライブなどで使用する為に、自宅から持ち出し、音を出すまでの時間が、圧倒的に、Organelle Mの方が早い。
あと、電池を入れておけば、ちょっとリビングに持って行って、内臓のスピーカーで鳴らして練習、自分の作ったシンセを試すといった事が簡単。
自分が使用する場合、どちらにも利点、欠点はあるが、曲を演奏するならPC、1パートを担う楽器として使う場合は、Organelleに軍配があると思っている。
伝わるだろうか?
中古について
発売されて間もないので、見ない。
旧型のOrganelleもあまり見ない。
そもそも、国内で人気があるのかがわからない。
大手の楽器屋でしか扱いが無いので、中古で購入する際も、一度触ってみる事をオススメする。
総評
満足。
個人的には、こういった1つの機能に縛られない、カメレオンタイプの楽器は大好きだ。
あと、楽器が教育してくれたり、その機会を与えてくれるタイプの楽器も。
マンネリ化する演奏形態に変化を与えてくれるし、学習により、音楽家としてもステップアップできるのは良い。
おそらく飽きも来ないし、今後も自分でパッチを組んで色々と試していく予定。
なので、自分のライブセットの改定を考えている人や、Pure Dataを学びたい人、自分で楽器を作っていきたい人には、オススメできる楽器ではないだろうか。
末永く付き合っていきたい楽器である。
動画を見て、少しでも気になったら、楽器屋で試奏してみて欲しい。
楽しいよ。